【1日目】 毎年この時期に墓参も兼ねて山梨を訪れるようになり早3年目である。今年は記録的猛暑が続きなおかつ 後ろから台風に襲われた翌日ということで、もしかしたら条件的には悪くないかもしれない。さて 今年の目標は3種+αである。3種はオオトラ、フジコブ、そしてシロオビドイである。正直、私の様な 下手っぴに簡単に採れる代物ではないのは百も承知。行き当たりばったりの"マイポイント"採集で難敵に どこまで迫れるか?というノリである。 現地到着後すぐさま特急停車駅前からレンタカーを飛ばし、午後半ばにいつもの林道に入った。道中時折 薄日がさす時もあったが、大方はドンヨリと曇っていた。目指す富士方面も雲が垂れ下り、山の威容は 全然見えない。 目指す林道に辿りつき、ちょっとショッキングな風景に戸惑うも気にせずに直進。林道両側の林も薄暗く 不気味だ。 <曇天> 早速退避スペースに車を止め、周囲を見回すと傍らの薄い草藪が良い感じに見えたので覗いてみる。一発で 長い触角が2本見えた。早い!林道到着後数分のできごとであった。 <フジコブヤハズカミキリNo.1> 今回の目的のひとつは昨年一匹しか採れなかったフジコブヤハズの追加と生態写真の撮影であったが、両方 とも一瞬で達成してしまった。もしかしたら今回はツイているのかもしれないと期待に胸が躍る。 そこから先は百均傘によるビーティングを行いつつ先へ進むが追加は得られず、昨年貴重な一匹を捕獲した エリアへ到着した。そもそも普段ビーティング採集などしたことがないので非常に難しい。傘を差し込む スペースがなかなか見つけられず、四苦八苦してしまう。叩き棒もその辺で拾った木の枝なので、早くも 手のひらの皮が剥けてしまった。 さて、車を降りて歩きだそうとした瞬間、一種異様な雰囲気に包まれた。道の先を見てみると山からガスが 降りてきている。それは見る見る濃度を上げていき、まさに襲ってくるという感じ。正直怖い! <ガスが降りてきた!> とりあえず車をUターンさせ、林道入口まで引き返し、そこの駐車スペースにて待機することにした。無理 して山で立ち往生してしまったら目も当てられない。 ガスは薄くなったり、濃くなったりを繰り返し幻想的な眺めを繰り広げていく。濃い時で視界5mくらい だろうか?一瞬自分がどこにいるのかもわからなくなるような不思議な光景。しかも自分の周囲の大気が 白く柔らかく揺れているのだ。 <一瞬のガスの切れ目> ガスの切れ目では目の前の針葉樹林が突然奥行きを取り戻す。しばらく車の中から自然のショーを楽しんで いた。1時間程も待機したのだが、ガスは一向に去る気配がない。予報では明日は晴天というだし今日は 下見ということで無理せずに宿へと向かうことにした。一匹採れているし・・・ 【2日目】 予報通り朝から日差しはたっぷり、頭の上は真っ青だ。ただ気になるのは山梨県内残暑厳しいという予報の 中、この辺りだけが秋の気配を感じる気温だということだ。御山は中腹だけに雲がまとわりついているが 恐らく林道周辺は大丈夫であろう。 <雲の腹巻状態> 林道に突入するとやはり雲の影響はなかった。気温も朝方にしては長Tでは汗ばむほどまで上がっている。 とにかく今日の目的地を目指して林道を先へ先へと向かった。昨年見つけた場所なのだがカマツガ?とモミ の混生林で木の本数だけは沢山あるという場所。今日は1日ここで粘ることにしていた。 <林道も晴天> 途中道がガレて難儀した場面もあったが何とか目的地に到着。キノコ狩りの人たちもめったに通らない 静かな静かな山奥である。 <目的地> 林内にはこのような粗朶場も随所にあり、とにかく叩くには困らない。が、叩き方が慣れてないので 上手に効率よく叩けない。百均傘を2本潰しても結局シロオビドイは採れなかった。orz <枝打ちした後の粗朶場> 持ってきた傘を2本とも潰したのでもう叩けなくなった。では、辺りの笹でフジコブ追加でも 狙おうかと笹が生えていた駐車ポイントへと向かった。 さて笹ポイントに到着すると、なんと早速2本の触角を発見!昨日といい今日といい今回はフジコブと 非常に縁がある。 <暗いのでフラッシュ。夜ではないです。> 続けてすぐ隣には小ぶりだが全身を露出させたヤツが居てくれた。 <ベストショット> もう今回はフジコブは満腹。あとは最後の大物の降臨を待つのみである。林内を探索してみると古くは あるのだがこんな痕跡らしきものも見られるのでいても不思議はない。ただあまりにも広すぎて、木が 多すぎて見つけられなくても何の不思議もない。 <痕跡らしき> それから何時間もただ木を見上げることになる。時折青空を背景にアサギマダラなどが舞っていって目を 楽しませてくれる。時間だけが過ぎていくのでもったいない気もする。どこか余所に行こうかとも考えたり する。結局は開き直った。この自然の中で時間だけが過ぎていくという今の状況を崩す方がなんだかもった いない。 <木の下で> やはり大物は降臨しなかった。してたとしてもこのボンクラ眼には見えていなかったであろう。ただただ 阿呆のように口をあけて沢山の木を順番に眺めて歩き回った数時間はなんだかとても貴重な時間だった ような気がする今回の山梨であった。 さて、また来年も来れるだろうか?来るとしたらこの季節?名残惜しくも翌日、山梨を後にした。
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